好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
何でこう恥ずかしげもなく言えるかな……。
瀬戸は相変わらずにこにこしながらあたしを見ている。
「……今つぐみちゃんって言った。
だから本気じゃない」
「あれ。あー、やっぱ呼び方違うとすぐにバレちゃうや」
ははっと笑ってから瀬戸はまたあたしの顔を見て……今度は優しげな瞳をしながら微笑んだ。
「うん、今のは本気の告白じゃないよ。
だって、本気のはこの前したじゃん?」
「本気って……」
「そんな毎回毎回本気でこられたらつぐみちゃん、疲れちゃうでしょ。
あー、でも好きっていうのは本当だけど」
そう言いながら瀬戸はあたしの方に手を伸ばす。
その手を見ながら首を傾げれば、瀬戸は小さく笑いながらあたしの左手をそっと掴んだ。
突然温もりに包まれた左手に驚いて瀬戸の顔を見る。
「な……何?」
「帰ろ。
送ってくからさ」
「帰るよ……帰るけど……」
この手は何?
そう思って瀬戸に掴まれている左手を見ると、スッとあたしよりも大きな手が離れていく。
「え……」
「うーん、やっぱどさくさに紛れて手を繋ぐのはダメかー」
残念、と言いながら瀬戸は苦笑いをする。
その表情に、さっきの自分の反応が申し訳なく感じる。
「今度は何もしないから。
だから、帰ろ」
「……うん」
あたしが頷けば、瀬戸は嬉しそうに笑う。
こんなことでも喜んでくれる瀬戸。
あたしは左手に微かに残された温もりを感じながら、瀬戸の後をついていった。