好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「瀬戸には負けたくなくて。
アイツも俺と同じような状態なんでしょ?」
「え……何でそれを……」
「昨日の瀬戸の言葉とか聞いてたら、何となく。」
水谷君はニッコリと笑う。
「だから、俺にもチャンスちょうだい」
でも……。と心の中で思いながらも、何も言葉に出せない。
あたしってこんなに何も言えない人だったっけ?
こんなに流されやすい人だったっけ?
瀬戸もだけど、水谷君のこともあたしは何とも思っていない。
だからこんなのよくないって、はっきり断るべきだって分かってるのに……
本人を目の前にするとなかなか言えない。
そんな自分が嫌になる。
あたしがそんな風に自己嫌悪に陥っていると、突然後ろから肩を叩かれた。
驚いて振り向けば、あのヘラヘラした顔がそこにはあった。
「瀬戸……?」
「おーい、そこの水田クンとやら。
つぐみちゃん困ってんじゃん」
瀬戸はあたしの肩に手を置きながらいつもの調子で……でも視線は痛いぐらいに水谷君に向けられていた。