好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「ちょっと、つぐみ。
せっかくの夏休み前だってのに、何そんな辛気臭い顔してるの?」
突然、頭上からハキハキとした声が聞こえたてきた。
重たい頭を上げて見てみると、ショートカットのよく似合う女の子がそこにいた。
「リホ」
「もう。
そんな幸せも全力で逃げそうな顔して」
どんな顔よ。
そこまで酷い顔してない。
そんなことを思いながらジトッとした視線でリホを見れば、リホは白い歯を見せてニッと笑った。
「そんなつぐみに朗報」
「何?」
「今度の土曜、学校の近くで夏祭りあるじゃん?
それにクラスで行こうかーって話になってるんだけど。行く?」
夏祭りかー。
確か去年も行ったな。
花火がすごく綺麗で。
「行く」
「よし来た。
結衣ちゃんは?」
「土曜でしょ?
うーん……ちょっと無理そうかな」
「そっかー、残念。
でもまたこういうの企画するつもりだから、その時はね!」
リホの言葉に結衣は笑いながら頷く。
「リホが企画してるの?」
「学級委員として、クラスの親睦を深めるためにねー」
しっかりしてるわ、本当に。
あたしはリホを見ながら小さく笑った。