好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

「ちょっ、ヒロ!」

「平野、若干引いてるぞ」

「え、そんなことないってば。
ね、つぐみちゃん」

「広里君、それ連れて帰っていいよ」

「つぐみちゃん!」


二人して酷いなーなんて言いながらも笑っている瀬戸。


「ていうか、お前。
まだ平野に付きまとってるわけ」

「付きまとってない。
俺のは単なるラブコール」

「お前、もうただのストーカー予備軍だわ」


テンポの良い二人の掛け合い。

やっぱ、仲が良いんだ。

思わずクスッと笑ってしまった。

それに気づいた二人が揃ってこっちを見る。


「涼のせいで笑われた」

「え、俺?
んー、でも俺は笑ってくれて嬉しいんだけど」


そう言って瀬戸はあたしの目を見て優しく笑う。

まるで壊れ物を扱うかのような優しい眼差し。

胸がキュッとなるような感覚がして、あたしは慌てて何でもないと自分に言い聞かせる。

何でもない。

瀬戸がこんな風に笑うといつも変な気分になるけれど。

それは瀬戸が普段はこんな風に笑わないから。

だから調子が狂うんだ。


「最近元気なさそうだったからさー。
平野は笑ってた方がいいよ。
笑ってた方が可愛い」

「っ…………」


だから。

だから、何でそんな恥ずかしいセリフを普通に言えるの。

……ああ、もう嫌。

何かおかしくなりそうで。

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