好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
変にドキドキする胸を抱えながら瀬戸を見れば、ん?と小首を傾げられた。
「つぐみちゃん?」
「おーい、瀬戸!」
瀬戸があたしな名前を紡いだ瞬間、後ろから誰かが瀬戸を呼ぶ声が聞こえた。
「瀬戸、この前貸したCD持ってる?」
「あー、持ってる持ってる。
今返すわ」
そう言いながら瀬戸は呼んできた男子と共にこの場を離れていく。
それにホッとしながらも、何だかよく分からない感情が芽生えてくる。
違う。
違うの。
あたしは瀬戸のことは……
好きにはならない。
「……平野?」
名前を呼ばれてピクリと反応すると、広里君が不思議そうな顔であたしを見ていた。
「どうした?」
「あ、いや……」
広里君はしばらくあたしを見つめ、やがてフッと小さく笑った。
何かを悟ったようなその顔にあたしはなぜか少し焦る。
「違うから!」
「俺、何も言ってないよ」
笑いながらそう返されて、言葉に詰まる。