好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「……水谷君の気持ちは嬉しいけど。
あたし、水谷君と付き合うことはないよ」
ああ……何で水谷君相手だとはっきり言えるのに。
どうして瀬戸は……。
「……うん、そうかもね。
何となく分かってるよ」
「なら……」
「でも、やっぱり言わせて。
今度の土曜。
夏祭り、一緒に行かない?」
土曜の夏祭り……。
それは……、そう言おうと思った瞬間、体が後ろに引っ張られた。
スッと引っ張られたかと思うと、気づいた時にはあたしの目の前には水谷君じゃなくて大きな背中があって。
誰の背中か一瞬分からなかったけど、声を発した瞬間に誰か分かった。
「残念でしたー、つぐみちゃんはクラスのみんなで夏祭りに行くんですー」
こんな気の抜けた喋り方。
あたしの周りには一人しかいないから。