好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

「瀬戸……」


思わず名前を呟くと、瀬戸はあたしの方を見てにっこり笑う。


「ウチのクラス超仲良いから。
ついでに俺達も超仲良いから。
だから邪魔しないでくださいー」

「あたし達は別にそんなに……」

「ちょっと、つぐみちゃん。
俺のハート、地味に傷ついてるんだけど。
地味にライフ削られていってるんだけど 」


口を尖らせながらそう言う瀬戸を見て、あたしは思わず笑う。

何だか落ち着く。

理由なんて分からないけど、こんな軽いやり取りをしてると心が落ち着くんだ。


「…………………」


水谷君が黙ったままそんなあたし達を見ていることに気が付いた。

そして、小さく笑うと水谷君はゆっくり口を開く。


「分かった。
クラスの方が大事だもんな。
ごめん、変なこと言って」

「いや……」

「本当だよ。
つぐみちゃんはこっそり俺と抜け出すって決まってるんだから」

「誰もそんなこと言ってない」


変なことを言う瀬戸の背を軽く殴りながら水谷君を見上げる。

水谷君はどこか切なげで……

そんな顔をあたしがさせているのかと思うと、罪悪感が募る。


「じゃあ、俺は教室戻るね。
ごめん、平野」

「いや、あたしこそ……ごめんなさい」


最後に謝ると、水谷君は少しだけ微笑んで背を向けて行ってしまった。


「………………」


黙ったまま水谷君の背を見つめていると、ポンっと肩に手が置かれる。

見上げると、瀬戸が複雑そうな表情であたしを見ていた。


「……気になる?アイツのこと」

「……少し、ね。
でも、これでいいんだと思う」


瀬戸はじっとあたしの顔を見た後、水谷君が去っていった方へと視線を向ける。


「……俺もああなるってことか」


瀬戸は小さな声で呟いていたけれど、あたしにははっきり聞こえた。

その時の瀬戸の表情も……全部が見えてしまった。


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