好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「あれ、つぐみ知らなかった?」
「ううん、結衣が瀬戸のこと好きだったのは知ってるけど……」
「去年からだよね。
あたし、委員会同じだったんだけどさ。
すごかったよ、アピール。
瀬戸もうんざりしてた」
え……そうなの?
去年から?
「瀬戸とはクラス違ったし、まともに話せるのが委員会の時だけだったからなのかもしれないけど。
大人しそうに見えて意外とやるんだなーって思ったよ」
初めて知った事実に驚きを隠せないあたし。
そんなあたしをよそにみんなは話を進めていく。
「けど、瀬戸があれだけつぐみ好きアピールしてたらねー。
もう瀬戸にはいけないでしょ」
「分かんないよ。
中学の時もさー、好きだった先輩のことずっと追いかけ回してたって聞いたし。
結構諦め悪いんじゃない?」
「瀬戸にももう何回も告白してるらしいよ」
……何回も?
じゃあ、あたしがラブレターを渡したあれは……初めてじゃなかったってこと?
だから、あの時瀬戸は……。
あたしが嫌な考えに陥りそうになったその時、隣からパン!パン!と手を叩く音が聞こえてきた。
「ほらほら。
そんなのただの噂でしょ?
もうその辺にしておきなさい」
リホが呆れたような顔であたし達を見る。
……そうだよね。
ただの噂だよね。
噂なんて気づいた時には結構大きくなってるものだし。
事実とは違うことも混ざっているかもしれない。
だから……気にすることなんて、ない。