好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

モヤモヤした気持ちを抱えながらあたし達はまた歩き出す。

キャッキャッとみんなは話しているけれど、あたしはどうしてもさっきのことが気になる。


気にすることなんてないのに。


「そろそろ集合場所行こっか」

「そうだね。ちょっと早いけど、そこに行って駄弁ってようよ」


花火……。

楽しみにしていた花火だけど、何だかテンションが上がらない。

みんなの少し後ろを歩いていくあたし。

ボーッと並んでいる屋台を見ながら歩く。

周りはこんなに賑やかなのに。

あたしの心は薄暗いまま。

ダメだ。

せっかくみんなで来てるんだから、楽しまないと。


「あれ………」


そう思ったその時。

あたしの視界に見覚えのある人物が目に入る。

その人もあたしに気がつき、こちらに向けて軽く手を挙げた。
< 88 / 253 >

この作品をシェア

pagetop