好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「水谷君」
水谷君は手にりんご飴を持ったままこちらに近寄ってきた。
誘いを断ったため、少し顔を合わせづらいなとは思ったけど、水谷君が笑顔のままだったので少し気持ちは楽になる。
「平野。まさか会えるとは思わなかった」
そう言いながら水谷君は微笑む。
「友達と来てるんだ」
水谷君がさっきまでいた場所には何となく見たことのある顔がいくつか。
きっとあそこのグループにいるんだろう。
水谷君はあたしの周りを少し見渡して、不思議そうな顔で尋ねてきた。
「瀬戸は?」
「え?」
思いがけない言葉に驚くも、水谷君は気にした様子はなく続ける。
「二人でいるんだと思ってたんだけど。
違ったんだ」
水谷君がリホ達の方を見ながらそう言う。
リホ達はというと、この状況はニヤニヤしながら少し離れたところから見ている。
「クラスで来たんだもん。
瀬戸といるわけないよ」
そう言ってあたしが笑うと、水谷君はそっかと言いながら小さく笑う。