好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―


トクトク……といつもより早く動く心臓。

瀬戸にも聞こえるんじゃないかと思って隣を見るも、瀬戸はボーッと夜空を見上げていた。


まだ打ち上がらない花火。


あたし達の間に……会話はない。


いつもだったら。

瀬戸はペチャクチャうるさいのに。

今日に限って静か。

……あたしも、何だか上手く話しかけられない。


ただ黙ったまま過ぎ去っていく時間。

だけど、手だけはしっかりと握られていて……。


「……つぐみちゃん」


瀬戸が不意にあたしの名前を呼ぶ。


「ん……?」

「髪。なんかソースついてる」

「え………えっ!?」


慌てて髪を触ると、確かに茶色いソースが先の方についていた。

ウソ……さっき食べたたこ焼き!?

もしかして、ずっとついてた!?


ティッシュで拭き取っていると、隣からプププっという笑い声が聞こえてきた。


「本当、つぐみちゃんって面白いよねー。
ソースって……ははっ!」

「ちょっ……そんなに笑わなくても!」

「いや、だってさー」


さっきまでの沈黙はどこへやら。

あたし達は気がつけばいつものように話していた。

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