STORMILY
STORMILY
前の授業が体育だと、やっぱりお昼休みに入るのが遅れちゃうな。


心の中でそう呟きながら、私は屋上へと繋がる階段を上り切り、扉を押し開け外に一歩足を踏み出した所で、いつものように数回、深呼吸を繰り返した。


若干乱れた息を整える為でもあるし、地上から十数メートル上空の、澄んだ空気を思う存分堪能する為でもある。


その儀式を終え、再び階段室の外壁に沿って歩を進め、角を曲がった所で、先客がいる事に気が付き、思わずビクッとなりつつ立ち止まる。


と同時に、胃の辺りがズシンと重たくなった。


学校の中で唯一、心休まるこの空間を、独り占めする事ができなくなってしまったから。


「おっ」


踵を返して退散しようとしたけれど、まるでそれを阻止するかのように、その人物は素早く声を発した。


「やった。仲間が来た」


扉の開閉音と足音で、姿が見える前から誰かが来た事を察知し、歓迎の準備をしていたようだ。


コンクリートの出っ張り部分を椅子代わりにして腰掛け、笑顔でこちらに視線を向けているのは、この春我が校に着任した、数学担当の加賀見真先生。
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