STORMILY
数日前に行われた就任式で、先生が挨拶するやいなや女子生徒が一斉にザワめき出し、教頭先生が苦笑しながら静かにするよう注意していたっけ。


大学出たてというだけでも興味をそそられるのに、さらに長身で顔の造りも整っているのだから、若い女の子がミーハーに騒いでしまうのも仕方のない事なのではないかと思う。


って、私自身もバリバリ、その「若い女の子」のうちの一人なんだけど。


でも、キャピキャピとはしゃぐ皆の輪の中には入って行けなかった。


気軽にクラスメートと盛り上がれるようなコミュニケーション能力なんか皆無だし、そもそも、そういった方面に情熱を注げる心の余裕など、今の私にはないので。


「いや~、昼時なのに誰も来ないからさ。一人で寂しかったんだよ」


何て事を考えながらその場に立ち尽くす私に、先生は陽気に言葉を続けた。


「さ、座った座った。君も、弁当食うつもりでここまで来たんだろ?早くしないと時間なくなっちゃうぞ」


さっきはとっさにこの場を去ろうとしたけれど、よくよく考えたら、今さら教室に戻るのもクラスメートの手前何だか気まずい。


当初の予定どおりここで昼食を済ませ、そして目的を達成したら速やかに立ち去ろう。
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