STORMILY
一瞬の間にそこまで考えると、私は意を決して歩き出した。


手にしていたトートバッグからハンカチを取り出し、先生の左側、間に一人座れるくらいのスペースをあけて広げると、その上に静かに腰を下ろす。


その間、先生はペットボトルのお茶を飲みつつ私の動向を見守っていた。


直視していた訳ではないけれど、ほんの数十センチの距離に居るのだから、必然的にその表情や仕草は私の視界に入って来る。


至近距離で目にしてみて、やっぱり文句なく、正統派のハンサムさんだな、と改めて認識した。


綺麗な二重瞼の優しげな目元、スッと通った鼻筋、その下に位置するちょっぴり厚めの血色の良い唇。


そしてそれらを引き立たせる、色白できめ細やかな肌。


そこそこマナーやルールが身に付いている筈の高校生が、厳粛な式の最中、思わずはしゃいでしまっただけの事はある。


「誰でもそれなりにごまかせる、茶髪の無造作ヘアーとかじゃなくてさ、真っ黒で横分けでピシッと固めたダッサイ髪型なのに、それでもあれだけイケメンなんだから、本物だよあの先生!」


ふと、クラスのリーダー格の青柳さんが、教室で友達に向けてそう力説していたのを思い出した。
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