【完】First♡Love~すれ違う恋心~
震えている声。
微かに震えている体。
その小さな背中に、手を回せばいいのかもしれ ない。
だけど、俺は…それをしない。
だって…抱きしめたら、期待をさせてしまうか ら。
答えは決まっているのに、期待させることは…
何よりも、残酷だから。

「沙織、ごめん」
「…っ…ヒック…」
「俺は、美々だけが…好きなんだ」
「あたしじゃ…ダメ、なの?」
「…ごめんな、沙織。俺さ、バカだから、美々 しか見えないんだ!それに…もし、美々の代わ りに沙織と付き合ったとしても…沙織が傷つく だけだろ?」
「なにそれ、かっこよすぎなんだけど」
「沙織、俺なんかを好きになってくれて、ありがとう。沙織の気持ち、すげぇ嬉しいよ。ちゃんと、俺の心にしまっとくから」
「…ん。…っ…ね、玲央。わがまま、言わせて?」
沙織は静かに、言った。

「一度だけでいいから、抱きしめて」

…と。
< 52 / 217 >

この作品をシェア

pagetop