TSUBASA
それに、チクリと胸が痛む。


「良いよな、冬樹」


省吾は冬樹に同意を求める。


「あぁ。あいつが、コマだった時の話だろ。それ以外で、あいつを傷つける奴は許さねぇ」


その言葉に、胸がザワついた。


それが、何なのかはわからないけど、、、


「俺も葵ちゃんのことを、傷つけたいわけじゃない。ただ、俺らは上に立つ人間だ。組に危険が及ぶ時、私情を持ち込むのタブーだ」


あたしは、タブーに引っかかるのだろうか?


もしかしたら、冬樹も省吾も、、、


あたしのことを、簡単に切り捨てるんじゃないだろうか?


あたしが、山口組の若頭。


ハルの女だと知ったら、、、


あたしが、どんなに否定しようが、、、


あたしは下唇をギュッと、噛む。

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