TSUBASA
冬樹の手が伸びて来て、あたしは身構えた。


あれだけ、好きなことを言えば殴られても仕方ない。


そう覚悟を決めたのに、あたしの体に痛みが訪れることはなかった。


逆に、、、


__ビリビリッ__


何かを破く、音が聞こえ、閉じていた瞳を開ける。


足元には破かれた、諭吉たち、、、


さっき、あたしが体を売って稼いだお金たち、、、


「金が必要なら、俺に言え」


そう言って、お金を差し出してくる。


「自分のこと、安売りしてんじゃねぇ」


なんで、、、


なんで、目の前の男は怒らないんだろう。


怒るどころか、あんな酷いことを言ってしまったあたしに、手を差し伸べてくる。

< 90 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop