ただ、そばにいて
痛む胸をひた隠しにしながら私も階段を下り、目が合ったエリカさんに会釈すると、彼女も愛嬌のある笑顔でペこりと頭を下げた。



「綺麗な人~。ナツの彼女?」

「いや……いとこだよ」

「そうなんだぁ!」



当然だけど、仕方ないけれど……

ナツが私を“いとこ”と言ったことと、それを聞いて安心したようなエリカさんの声は、私をひどく落ち込ませる。

普通に考えれば、親戚なんて最初から恋愛対象外なのだ。しかも──。



“最低な男と寝てたんだから、お前も似たようなもんだろ”



私は、好きでもない男と淫らな関係を続けてきたような女。

そんな私に、ナツを振り向かせるほどの魅力なんてあるとは到底思えない。


考えれば考えるほど、暗い海の底に引きずり込まれていくようで。

楽しげに会話する、眩しい太陽のような二人を羨みながら、一人逃げるようにキッチンへと向かった。


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