ただ、そばにいて
■ビーチブレイク
夏なのにほとんど人がいなくなった海岸に、静かに降り注ぐ雨。
いつもは青い水平線がどこまでも広がっているのに、今は一面灰色の世界だ。
一人しゃがみ込んだ私は、ぼんやりとその世界を眺めていた。
この恋心はもう閉じ込めてしまわないといけないのかな……
でも、そんなことが出来るならとっくにそうしている。
私は彼がどうしても好き。ナツじゃなきゃダメなの。
ナツに愛されたい──…
「アサ姉!?」
──え? ついに幻聴まで聞こえるようになっちゃった?
「おい、アサ姉!!」
違う、幻聴なんかじゃない。
顔を上げると、海岸を走ってこちらに駆け寄る、ウェットスーツ姿のナツがいた。
「ナツ!? どうし──」
驚いて立ち上がった直後。
私はナツにしっかりと抱きしめられていた。
「ナ、ツ……?」
「何してんだよ、傘もささないで……!」
身体だけじゃなく胸の奥まで
ギュッと、きつく、きつく抱きしめられて声が出ない。
ナツの存在を身体全部で感じていると、耳元で余裕のなさそうな声が響く。
「ずっと抑えてたのに……そんな格好でいられたら我慢出来ねーよ」
「え?」
「濡れてるし、透けてるし……エロすぎ」
えぇぇ!?
少し身体を離し、自分の姿を確認してギョッとした。
白いTシャツが、雨に濡れたせいでぴったり身体に張り付き、水着がうっすら透けている……。