ただ、そばにいて


水平線から、目が眩むほどの光を溢れさせて顔を覗かせる白い太陽は、

朝の静かな海を銀色に輝かせていく。


いつだったか、同じ景色を見ていた私の目には、波と戯れるナツの姿が眩しく映っていたけれど、今その姿は海にはない。

私の隣で、肩を抱き寄せてくれているから。

昨日ナツが見たいと言っていたのは、この綺麗な景色のことだったらしい。



「俺、ずっと朝の海が好きだった。見てるとそれに飛び込みたくなって。……朝海も同じ」



淡い黄色に染まるナツの瞳が私を捉え、吸い込まれそうな感覚に陥る。



「他のことなんてどうでもよくなって、抱きしめたい衝動に駆られる時がある。一度それに負けたら、もう抑えるのは無理だ」

「ナツ……」

「誰に何を言われても、俺は朝海がいてくれたらそれでいい」

「……私も」



ナツさえそばにいてくれたら

抱きしめ合えるお互いの身体があれば、それでいいよ。


おでことおでこをくっつけて笑う私達は、砂浜に打ち寄せる波のように、引き寄せ合って唇を重ねた。



「──愛してる」



手が届かなかった彼は、こんなに近くにいる。

これからは二人で、一緒に同じ景色を見ていこう。

肩を寄せ合いながら、私達はゆっくり昇っていく太陽をいつまでも眺めていた。





  +……End★+



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