ヤクザの家族になっちゃった!?


車に乗り込むと今まで流れたことのない音楽が流れた。


しかも、私の好きなグループの曲。

るりに無理矢理見せられたPVを見て

一瞬ではまってしまったグループの。

でもこれ、最近好きになったから、

龍之介さんに好きなこと言ってないと思うけど…。

あ、もしかして、

「…龍之介さんもこのグループ好きなんですか?」

そうたずねる。

龍之介さんは少しの沈黙の後

「今日知ったグループだ」

と。

え、じゃあ今日はまったってことかな?

「誰かの紹介でですか?」

「いや、和泉達が騒いでただろ。」


…ん?

「じゃあ、好きなわけじゃないんですか?」

「まぁ、そうなるな。
でも、和泉は好きなんだろ?」

「はい、あ。もしかして私が好きだから入れてくれたんですか?」

そう聞くと耳を赤くして黙り込んだ龍之介さん。



…あ。

照れてる。

そんな姿にきゅんとする。

その後しばらく、歌を聞き入ってると

疑問がわいてきた。

私達が騒いでたのは朝。

学校で騒いでたんだよね、

それならこのCD、いつ買いに行ったんだろ…。

お昼?

いや、お昼は購買で見つけたし…。

今日はずっと学校にいたんじゃないかな?

すると、可能性が高いのは…

「さっきか。」

私がつい、声にだすと

「なにがだ?」

そう聞かれた。

「あ、いつCDを買いに行ったのかな…と思って。」

そう答える。

「あぁ。当たりだ。
悪かったな、待たせて」

そう言われ、置いて行かれたわけじゃないんだと、安心する。


「ところで柳っちはなにを計ったんですか?」

そう聞くと

「あいつに伝言を頼んだんだ」

「伝言?」

「和泉に待ってるように伝えてくれってな」

え。

「そんなこと言われてない…」

「あぁ。だから計られたんだ。
俺を焦らせるためにわざわざ嘘までつきやがって。」


そう、少し拗ねたように言った龍之介さん。

「何て言われたんですか?」

「お前があの男と帰ったって。
しかも仲良く。」

「あの男?」

「竜ってやつ。」

あー、竜ね、

「竜は今日バイトですよ!」


そう言うと、はぁ。と軽いため息をつかれ、

そうか。

とだけ返された。




家に帰ると、双子とこうが笑顔で抱きついてくる。

「ただいま戻りましたー!」

私はみんなが集まってるであろう食事場へ行き、声をかけた。

みんな、笑顔でお帰りーっていってくれたので、

ちょっと心がポカポカした。

私はおっちゃんに声をかけてから部屋に荷物をおき、食事を作る手伝いを始めた。


食事が出来た頃、

がチャっと玄関の扉が開いたおとがした。

除きこんでみると、

奈美恵さんが疲れはてたような顔で立ってた。

「あ、奈美恵さん、お帰りなさい」

と声をかけたら

ギューッと私に抱きついて

「ただいまー、」

と言ってからまだ離れない奈美恵さん。

よっぽど疲れたんだなぁと思ってたら

後ろから殺気を感じた。

恐る恐る振り返ってみると

そこには龍之介さん。


え、なに、次はなにもしてないよ…ね?

私は少し怯えながら

「龍之介さん…?」

名前を呼ぶと

「和泉から離れろ」

と。

あ。よかった
私にいったんじゃないのね。

安心してると

奈美恵さんと龍之介さんの喧嘩が始まった

「あんたが私をおいていったせいで私は疲れきってるのよ」


「先にいっておいただろう。
大事な女ができたらそいつしか乗せないと。」

え、

なに。

私乗っちゃったよ…?

それは、勘違いしてもいいのかな?

…いやいやいや。

今日は特別用事があった…わけじゃないか。

「後ろにくらいのせてくれてもいいじゃない?
ねぇ、和泉ちゃん、」

混乱してる私に話をふってきた奈美恵さん。


何でここでわたしにふるのよ…

とは思いつつ、答えないわけにいかなくて、


しかも今日今さっき怖い思いをした私にとって

乗っちゃいけないなんてことは言えなくて、

「い、いいと思います…」

そう答えた。

龍之介さんは

「そうか。」

と寂しそうに言った

普段そんな顔をしない龍之介さんだからか、

自分が悪いことをしたような気がしてしまった

私は思わず視線をそらした。

そらした先には奈美恵さん。


奈美恵さんはニコって笑ってから

龍之介さんに近づき

なにかをささやいたようだった。

奈美恵さんが去っていくと、

少しかおを赤らめた龍之介さん。



真剣な顔で私の名前を呼んだ。

「和泉。」

「は、はい!」

私は思わず固い返事をしてしまった

…しばらく沈黙が続く。

え、

「お前は…」

え、私?

またなにかした?

少し不安になりながら次の言葉を待つ。

「俺の女になったのか…?」


…へ?

えっと…

告白もしてないのに女になれるわけないよね、


「違う…と思います」

いってから気づいた。

今、告白のチャンスなんじゃないの?

この先、伝えたくても伝えられないことがあるかもしれない

だったら今、伝えるべきなのかもしれない


私は言葉を付け足した

「でも…。

えっと、私、」

テンパりすぎちゃって言葉がでない

心の準備なんて出来たなかったから、

フラれることを考えると怖い。

けど、今しかないんだって思うときっと、

後々後悔することは目に見えてる

私は米粒ほどもない勇気を振り絞り、

声に出した



「でも…、龍之介さんのことが好きです。」




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