ヤクザの家族になっちゃった!?

和泉side




和泉side


教室に戻ると早くホールに出るように指示された。

正直、仕事なんてやる気分じゃない。

龍之介のこと、気になってしょうがない。

けど、仕事をしなきゃ、他の人の迷惑になる。

公私混同しちゃ、ダメだ。

私はそう、自分に言い聞かせて

バタバタと仕事を始めた。


多分、午前より働いたと思う。


だって、働いてないと…暇があると考えちゃうから。

あの人は元カノなのかな。

とか、

今はどんな関係なのかな。

とか。

他にもたくさん。

だから、暇がない方がかえってありがたい。


なのに。

「いらっしゃいませー」

なんできたの…。

「あなたが和泉ちゃんよね?」

この人はさっき龍之介とあってた人。

間違えない。

こんなきれいな人、どこにでもいるわけない。


「そう、ですけど…」

言葉につまりながら返事をすると


にっこり微笑んで

「席、案内してくださる?」

「あ。すいません。こちらです…」


席を案内し、メニューを渡して、

さっさと離れたかったのに…。

「龍之介。」


そう、彼女が口ずさんだ。

「え?」

「龍之介、最近すごい幸せそうなの。」

彼女はそう言って笑った。

なんか、胸の奥がもやもやする。

「彼、優しいでしょ?」

そう言った彼女の顔は、

嫌みなわけでもなく、小悪魔でもなく、

ただ、大人の色気を醸し出してた。


「…はい。」


なんで龍之介が優しいこと知ってるの?

って思ったけど、

そりゃ、そうだよね。

龍之介だって今まで彼女がいなかった訳じゃないだろうし、

多分この人がその中の一人なんだろうし。

そんな人に優しくするのはあたりまえ…なんだよね、

それはわかってるよ。

わかってるけどなんか、

苦しい。

私だけだって、

そんなこと一度も言われてないのに。

そう、勘違いしてたからかな?


彼女になれたって浮かれてたからかな?

でも、理由なんてどうでもいいんだ。

ただ、苦しいの。

けど、こんなこと龍之介には言えない。

これ以上、子供だと思われたくない。

龍之介はきっと、今まで彼女みたいな大人の人しか見てこなかつただろうから。

幻滅してほしくない。

できることなら彼女のような、

隣にいても違和感のない女性になりたいよ…、

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