ヤクザの家族になっちゃった!?
急いで向かった先には、
龍之介さんの姿はなかった。
「…いない、か。」
他を探そうと、
くるりと体の向きを変えた時
目に写った人。
「誰を探してる。」
少し焦った顔をしてる龍之介さんがいた。
「龍之介さんのこと、探してたんです。
あの…さっきのことですけど…」
私がそう切り出すと
少しピクッと反応をした龍之介さん。
私は彼の顔を見ることができず、
下を向いて
「私、別れたくないです。
けどやっぱり、転入もしたい…」
そういった。
「…そうか。」
返ってきたのはそんな単調な言葉。
「わがまま言ってごめんなさい。
でも、きっと今踏み出さなきゃ一生成長できない気がするんです。」
「……。」
龍之介さんは沈黙のまま。
「私、いっぱい考えたんです。
こうたちとも、るりたちとも離れなきゃいけなくて、きっと不安なことたくさんあるんだろうなって。
でも、やっぱり龍之介さんのそばにいたいんです。
堂々と、胸はっていたいんです…。」
絞り出すように声を出して伝える。
今度はちゃんと顔を見て。
龍之介さんは少しの沈黙の後
「必要ない。」
そう言われ、戸惑った。
それは、別れるから…ってこと?
私の気持ちは受け止められないって…そう言うこと?
そう考えるだけで止まってた涙がまた溢れてくる。
そんな私を困ったように見下ろして
頬を伝う涙を親指の腹で拭き取った。
急に触れられ、ビクッと反応してしまう。
「別れたくないんだな?」
そういった彼の顔は
すごく優しくて穏やかな顔をしていた。
私は大きく何度もうなずく。
すると、龍之介さんは何度も
私の目に、頬に、唇に。
軽いキスを繰り返した。
優しいキスにドキドキする。
「龍之介さん、好きです。」
私がそう言うと、柔らかく笑って
「一度、距離をおこうか。」
そう言った。
混乱する私を見て
眉毛を八の字にして困ったような顔をした。
溢れてくる涙をおさえるために、
からだ全体に力をいれた。
そうじゃなきゃ、溢れちゃうよ…