ヤクザの家族になっちゃった!?


私は保健室へ行こうと方向転換をした。


…けど、体が止まる。

もし、

もしまた保健室で…

ううん。

奈美恵さんはそんな人じゃない。

私は自分にそう言い聞かせて歩き始めた。

ゆっくり、ゆっくり。

途中、柳っちとあって

そろそろ授業始まるぞ

って怒られたけど

私はは~いと軽い返事だけしてまた歩みを進める。



けどー…

保健室へ向かう途中の空き教室で

「ーーうぅっ」


泣いてるような声がした。

私は歩みを止め、

耳をすませた。

盗み聞きなんてするべきじゃないけど、

なぜかこのときは気になってしょうがなかった。

中からは、

すすり泣くような女の人の声と…

「元気だして」

ってはげます奈美恵さんの声が聞こえた。


奈美恵さんは言葉を続けた。


「つらいよね。
大好きだったんだもんね。

よく頑張ったね。
えらい、えらい。

中田さん、ここではいっぱい泣きなさい。」


そう、励ます声。

中田さん…?

中田さんってあの中田さん?

嘘でしょ…

泣いてるの?


なんで、、

なんて、思ってしまったけど、

そんなの簡単に予想がつく。

大河にふられたからだ。


…私少し勘違いしてた。

中田さん、強いんじゃない、

強がってたんだね。


最後に笑ったのは、

自分を励ますためだったのかな。

だってもし、


もし私が同じ境遇だったら…


その場で泣きわめいてたと思う。

それを我慢して我慢して…


そう考えたらものすごくバカだと思った。


中田さんがじゃない。

私が。

わかったつもりになってた。

るりのこともだし、大河のことも、中田さんのことも。


理解したつもりでいた。


私はバカだ。

すごく悔しいんだよ

苦しいときに気づいてあげられなかったことに。


仲いいとか、良くないとか関係なく。


気づいてあげられなかった。

そのくせ変に怒りを覚えて…

そんなの、私にはわからない痛みなのに。

想像なんて、そんなの越えるくらい辛いのに。

私は勝手に、

中田さんは強い子だって、

そう決めつけてた。





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