ゆり
早瀬
さゆりは降車駅に着くやいなや逃げるように降りた。

その後ろ姿を見送り、
ゆりかも降りる。

そんなに急がなくても
大丈夫なのに…。

ゆりかは、また小さく笑った。


ゆりかは、改札を抜けるとすぐにさゆりの姿を、知らず知らずのうちに探していた。


「さゆり!」
少年の、怒りに満ちた声が響く。
「あっ…早瀬!」

ゆりかが、さゆりの姿を見つけると同時の出来事である。

<さゆり>って言うのか
あの、面白い少女は…

ゆりかは、頭の中で数回<さゆり>と、つぶやいた。

喋り声は聞こえないが、何だか楽しそう。

ゆりかは、もやもやする感情を抑えながら、その光景を見つめていた。

もやもやの理由は考えてみても分からなかった。
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