ツンデレ社長と小心者のあたしと……3
慌ただしく去っていく社長。
仕事について、細かい事は何も言わなかった。
となれば、あたしにできるのは考えうる限り、最高の書評を最短期間で絞り出すだけ。
早速、社長がこれまで書いた本のリストをプリントアウトする。
手元にある本もあるけれど、それはほんの一部。
他の著者さんと共同で出しているものまで含めると、とても持ち切れないからだ。
そもそも、あたしに最初、社長の本を読ませたのは……元彼ミツアキ。
彼との思い出を捨てるタイミングで、一緒に処分をしてしまった本もあるのだ。
当時、あたしは大学生だった。
その頃は、こんな風に忙しく働くことななんて想像もしていなかった。
あたしにできることは限られていて、自分自身の限界にぶつかっていた時。
ミツアキとは大学入学の頃に知り合った。
爽やかなルックスとリーダーシップを取るのがうまい所が気になり、いつの間にか目で追うようになっていた。
今でも小心者なあたしが、その頃はもっと弱気だった……というのは簡単に想像がつくと思う。
周りに、お似合いじゃないかとはやし立てられ、
「付き合ってみる?」
とミツアキに聞かれたあたしは、夢じゃないかと思いつつ、こくこくと頷くだけだった。
それから1年くらいした頃だっただろうか。
ミツアキに変化が訪れたのは。