結香莉
───三週間前。学生の頃からの親友、綾乃とイタリアンレストランへ行った。主婦の私にとってはちょっとお高めなランチ。
「綾乃、平日が休みなんて珍しいね」
「有給とったんだ。ここんとこ休みなく働いてたから。結衣ちゃん、元気?」
「元気だよ。急にお姉さんになった感じ。子供部屋で一人で寝るようになったし」
などと、互いの近況報告を交えながらランチを楽しむ。
目の前にはバジルの緑とトマトの赤がおいしさを奏でるフェットチーネ。昼間からグラスワインも飲んで、至福の時。
モッツァレラチーズが絡まったフォーク越しに、ふと綾乃の左手薬指を見ると、大粒のダイヤが凛と鳴るように輝いていた。
「綾乃、もしかして?」
「うん。昨日、彼氏にプロポーズされちゃった」
「うわー、プロポーズ! おめでとー。よかったね」
私の興奮した声で周りの視線が一気に集まり、拍手へと変わった。
……綾乃が羨ましい。それは大粒のダイヤが、ではなくて、ダイヤの輝きにより、更に美しさを増した綾乃の手。
細くて艶があって。爪の形も綺麗で、どんなデザインのネイルも綾乃のために存在しているかのように似合ってしまう。
綾乃は頑張り屋さん。努力して希望する今の部署にやっと配属された。結婚しても仕事は辞めないという。きっと私みたいな手にはならないだろう。
カレーを煮込みながら、綾乃の手を思い出していた。
綾乃が使っているという恋のお守り。それは、いい香りがして、手を艶やかにするハンドパフューム。
夜、尚宏さんと結衣がお風呂に入っている間に、綾乃が教えてくれたサイトにアクセスしてみた。
恋のお守り、私も使ってみよう。