大人のEach Love


シュウジに渡されたワイングラスを手にして、それに口をつけた。

あの日の夜と同じアップルサイダー…とは、少し味が違う気がする。


ほんのり香るレモンの匂いと、…お酒?


一口飲んでから、そのワイングラスを凝視している私に、シュウジは話し出した。


「ああ…ジンが濃い目に入っているからグビグビ飲まない方がいいよ?」


「今日はお酒を入れたの?何で?」


「あれ?ジンは嫌いだった?」


「ううん。そういうわけじゃないんだけど、
ノンアルコールでも私は良かったかなって。」


隣に腰掛けていたシュウジは、艶やかな表情を浮かべながら私を覗き込む。

私の髪に手を伸ばし、その髪を指先でクルクルと遊ばせながら視線を私に向けた。


「今日、飲んでないでしょ?だからだよ。」


「飲んでいたら、ノンアルコールだったの?」


好きな人に飲まないで欲しいと言われながら、飲むような事はしたくなかっただけ。

こうしてお酒を出してくれたという事は、私に対する労いなのだろうか。

お酒を口にしたかった訳ではないけれど、シュウジの艶やかな表情の方に酔わされそう。


「飲んでいたら、お仕置きタイムだったよ?」


その言葉にゆっくりと早まる鼓動を感じながらも、シュウジから目を反らせなかった。



< 158 / 266 >

この作品をシェア

pagetop