大人のEach Love



君の手を握り締めた後、
『謝る事じゃ、ないんだよ?』
と言葉にしながら、内ポケットに入れてあった物を取り出した。


君の手には、
幾つもの痛々しいあかぎれ。


君が、
家族の為に頑張ってくれているからこその、
その手。


だけど、そんな痛々しい【証】なんか
いらないんだ…。

こんな俺ではあるけれど、
君の支えでありたい。

もっと、俺を頼ってくれよ。


君の手をキュッと強く握り締めた後
内ポケットから取り出したそれのキャップを捻る。

不思議そうに俺の手元を見つめていた君は
『…それは?』
と俺に問いかけた。


「ハンドクリームだよ。
君に、塗ってあげる。」


俺の言葉に一瞬驚き顔をして見せた君は、

その後

嬉しそうに、微笑んだ…。



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