大人のEach Love
--- ドクンッ…
それでなくても、
鼓動を早く打ち鳴らせていたのに…
一層、高鳴る私の胸。
あまりの緊張感に、憎まれ口すら叩けない。
嬉しくて、恥ずかしくて、
ただ俯く事しか出来ない私。
その私の髪を指先で摘まんだ彼は
そっと言葉を続ける。
「真弓さんの髪、綺麗だよね?…でも、
お客さんが触ると、嫌な顔をしてる。」
「…えっ?!私、そんなあからさまになんて…」
「うん。してないよ?
完璧な、営業スマイル。
だけど、…僕には分かるんだよ。」
「へっ…?」
「僕に、こうやって触られるのも…イヤ?」
その台詞、今の私に言わないで…。
どっちつかづな、こんな私に。
想いを寄せる相手に
『触らないで』
だなんて、言えるわけもないのに。
むしろ…
…触れて欲しいのに。