大人のEach Love



「ねぇ、…真弓…?」


…あ。『さん 』が、抜けた…。


「泣かないで?僕、鏡見ててって、言ってる。
頼むから、…見て?」


涙で滲んだ世界ではあるけれど、
私は俯かせていた顔を上げ、鏡に目を向けた。


耳元で『イイ子だね?』という言葉が聞こえて
少しの苛立ちは感じたけれど。


「僕ね?フロントホックが好きなの。
後ろからこうやって抱き締めながらだとさ?
『支配してる』って感じがするんだ。」


「何…それ。…まるで俺様じゃない。」


「だよねー?だけど、そうじゃなくってさ、
『護ってる』って感覚に近いんだ。」


「…何それ。
私よりも年下で、
私よりも可愛い顔をしてるくせに。
…ムカつくのよっ。」


「そう?…じゃあ、
そんだけ僕が気になるって事だよね?」


「そこまで私、言ってな…」


「真弓。…好きだよ。
信じて?…僕の事。
不安にならないで、…受け入れて?」


…ズルい。



そんな、言葉。


反則だよっ。



< 189 / 266 >

この作品をシェア

pagetop