大人のEach Love
「ねぇ、…真弓…?」
…あ。『さん 』が、抜けた…。
「泣かないで?僕、鏡見ててって、言ってる。
頼むから、…見て?」
涙で滲んだ世界ではあるけれど、
私は俯かせていた顔を上げ、鏡に目を向けた。
耳元で『イイ子だね?』という言葉が聞こえて
少しの苛立ちは感じたけれど。
「僕ね?フロントホックが好きなの。
後ろからこうやって抱き締めながらだとさ?
『支配してる』って感じがするんだ。」
「何…それ。…まるで俺様じゃない。」
「だよねー?だけど、そうじゃなくってさ、
『護ってる』って感覚に近いんだ。」
「…何それ。
私よりも年下で、
私よりも可愛い顔をしてるくせに。
…ムカつくのよっ。」
「そう?…じゃあ、
そんだけ僕が気になるって事だよね?」
「そこまで私、言ってな…」
「真弓。…好きだよ。
信じて?…僕の事。
不安にならないで、…受け入れて?」
…ズルい。
そんな、言葉。
反則だよっ。