大人のEach Love



--- 待ち続ける事一時間。


会いたいと思っていた彼が姿を見せた。


『彼女がいただなんて、聞いてない!!』
って…言いたかった。


でも、それが出来ないのは多分、私の心の中に共犯者的な物を感じていたからかもしれない。


彼の【今】の気持ちを信じたかった。



だから……

感情的になりそうな自分の衝動を抑え込んで
『…お疲れ様。』
という言葉を絞り出すように言ったんだ。
不満や不安をぶちまける変わりに…。


すると、彼は私の表情を見て何かに気付いたんだろう。
『何か…聞いたのか?』
という言葉を私に発した。


彼の言葉の意味なんて、考えるまでもなくて。


私が知らなければ黙っているつもりだったのかもしれない。
彼だけが悪いんじゃない。確認しなかった私にも非がないわけじゃない事くらい…


でも…それでも彼に対して感じた不信感は拭えなかった。


『何か聞いたのかって…っ。
何で…、何で彼女がいた事を話してくれなかったの?!
知らなければ黙っているつもりだったの?!』


ホットコーヒーだったカップ。

待っている間に冷えきったコーヒーカップ。

それを触れていた手に、力が込められるのを感じていた。


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