大人のEach Love



『…あたしの所に、彼。戻って来たわね?
彼は、あたしを選んだのよ?…ふふっ。』


彼女を目の前に、私は俯く事しか出来なかった。
言い返したい気持ちは十分にあるけれど、彼女が言う通り…彼は彼女を選んだのだから。


『…彼にちょっかい出すのは止めてくれない?
あの人、優しいから貴女の事を慰めて抱いてしまうかもしれないし。…ね?』



彼女の言葉に、目頭が熱くなる。



悔しくて悔しくて、それでも彼を好きでいる自分が不甲斐なくて。

私だけが感じている重苦しい空気の中、彼女は鼻で笑って更衣室を後にした。

その直後、悔しさに堪えていた私の目から
ぶわっと涙が溢れ出す…。



…幸せだった時は、あまりに短くて。



先輩に咎められ、彼には裏切られ、その彼の彼女には釘を刺されながら嘲笑われる。


そんな自分が、心底嫌になった。


こんなにひどい目にあいながらも。


【好き】という気持ちが無くならないままに。



私は、本当のバカだ…。



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