大人のEach Love



あの二人の事。


それを友人に聞き返さなくても、彼と退職した彼女の他には無いだろう。


私には直接言ってはこないけれど、社内で噂になっている事を先輩に聞いて知っていたからだ。


そもそも、私は目立つのが苦手だった。
学生の頃から、仲の良い友人であっても一歩引いた付き合いをしていたくらいで。


だから、友人が言う【二人】とは、その人達しか有り得ない。


でも、気付かれない様にしていたつもりが友人には気付かれていただなんて、驚かないはずがなかった。

次の言葉を発っせないまま、口を開けたり閉じたりを繰り返す事しか出来なくて。



「まさか、上手く隠せてると思ってたとか?」



「………。」



「隠せてないから。
…あんたは、すぐに顔に出るんだよ。」


そう言った友人は、汗をかいた生ビールのジョッキを掴んで、ゴクリゴクリと飲み出した。




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