大人のEach Love



ぷはっと気持ち良さそうに息を吐き出す友人を前に、私もそれに口をつける。

友人の様に豪快には飲める気分ではなくて、ちびりちびちとまるで日本酒を口にしているようだ。

出るものは溜め息ばかり。

これから何を聞かれるのだろう。
友人も同じように私を咎めるのだろうか?
聞かれる前に全てを話すべきなのだろうか?


話し出さない私に友人はしびれを切らしたのだろう。私の鼻先を人差し指で触れながら
『話しなさいよ。』
と言い、鼻で笑ったんだ。


「びくつかないでよ。責めたりしないし。
どうせ、あの男に丸め込まれたんでしょ?」


「えっ…?今、何て…。」


「だからぁ~。アタシは、あんたは悪くないって言ってんのっ。あんな男に引っ掛かって、バカだね~。」


咎められると思っていたのに、真逆な言葉を発した友人。
私は悪くないと言い切った友人。

どう反応することも出来ずに、ジョッキを手にしたまま友人に視線を向けることしか出来なかった。






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