大人のEach Love
彼の言葉を聞いた私は、それだけで十分だった。
彼が不安にならない様に、いつか彼の隣を歩ける様に、細心の注意を払いながら彼の支えになる事に徹したかったからだ。
ほんのりとした嬉しい気持ちと、…安堵。
それを感じながら更衣室のドアノブにてを掛け、入ろうとした私。
その私の腕を、突然力任せに引いた人物がいた。
相手が誰かを確認する事も出来ず、そのまま男性側の更衣室に押し込められたんだ。
室内の明かりは灯されず、引いた人すら見えなくて。
何処に立っているのかも。
社内に居るとはいえ、この更衣室の併設されていた建物には人が少ない事を知っていたせいか、
『誰ですか?』
という言葉すらも出せなかった。
叫んだところで誰も来たりはしない…。
余りの怖さにジリジリと後ろに後退しながら、自分の体を自分の両腕で抱き締めた。