大人のEach Love
回る廻る心の歯車
何を言われるのかと、ビクビクしていた。
肩に変な力が入り、握られている手を振り払ってでも逃げ出したい。
彼が、私の気持ちを受け入れてくれるまで待つつもりではいるけれど、もしも私の嫌な予感が的中していたとしたら。
…傷付くのは嫌だ。
でも、何の話なのかも聞かないままに、衝動任せに逃げ出すのも嫌だ。と、思う自分もいて。
心の中で押し問答をしていた私は、暗闇の中瞳を右へ左へと揺らめかせた後、ぎゅっと瞼を閉じて深呼吸を繰り返した。
「…話して下さい。
彼が、何か言ってきたんじゃないですか?」
意を決して私が話し出すと、和久井さんは小さく『えっ?』と驚いた様な声を出した後、
『どちらかと言えば、僕の方からアイツに言ったという言い方が正しいのかもしれない。』
と話し出したけれど、今度は、
『あー…やっぱりダメだ。闇に隠れて話すのは卑怯だ、僕は。』
と言いながら、握っていた私の手を離し入口があるであろう方に向かって歩き出した。