大人のEach Love
--- パチンッ…
静まりかえっていた室内にスイッチを入れた音が響いた。
天井にある蛍光灯がパカパカっと数回点滅すると、暗かった室内を明るく照らし出して。
暗闇に慣れた目が、その光で眩しさを感じると、ドアの前に立つ和久井さんの姿を捕らえた。
スイッチに手を当てたまま、私の方を見詰めていた和久井さんの顔は、見たことの無い程に赤面していて。
まだ何も言われてもいないのに、和久井さんの表情を目にした私は身構えてしまったんだ。
これは彼がどうこうしたとか、彼が何を話しただとか、そういう話なんかじゃない。
和久井さんが言おうとしている事は、私が予想していた事とは違う事。
彼の含まれない、和久井さんと私の話だという事を。
彼や和久井さんからしてみれば、私は年下の若輩者なのかもしれないけれど、私はそれを感じ取れない程幼くは無かった。
和久井さんが、私に好意を抱いてくれている事を。