大人のEach Love
その彼女が、アルバイト帰りの俺を呼び止めた事に、俺は必要以上に驚いた。
話した回数なんて数えられる程度しかなかった彼女が、俺を呼びとめるだなんて。
そう思ったけれど、落ち着きを払いながら返事を返した。
「田代先生、どうかしましたか?」
俺のその問いかけに、彼女はモジモジとしながら言葉を続けた。
「あの・・・。良かったら、お時間頂けませんか?夕食がてらにと・・・。」
彼女が俺を誘って来るのは今夜が初めてで、
しかも今日はクリスマス。
『いいですよ。』だなんて即答するのも格好がつかない。
クリスマスで一人寂しい男みたいじゃないか?
ここに来て、変な見栄を張ってしまう自分も馬鹿らしいが、勢いでその言葉を発してしまった。
「手短にお話が出来る様に、
喫茶店でもいいですか?」
あぁ、俺の変なプライド、
どこかに飛んで行けばいいのに。