大人のEach Love



彼女の名前は【花子】と言って、地味子ながらにも、身だしなみがしっかりしていた。

どんなに華やかに着飾っている美形の女子社員にも劣らないと俺は思った。

それに、俺は…
彼女が毎日、社内の花を生けている姿に惹かれたんだ。

俺は別に【地味専】なわけじゃない。
ただ、惚れたのが彼女だったってだけの話。


その彼女に告白し、保留にされ、
『愛らしさが足りない』
とそう言われ、愛らしさとは何ぞや?

と、考えながら駅に向かって歩みを進めていた。




ふと視線を足元に落せば、そこには雑草の葉の上で丸まっている【でんでん虫】の姿。


「こんな時期にでんでん虫?でも、動いていないな。冷えるからか?」


よくよく考えてみれば、でんでん虫はナメクジの仲間。
ナメクジは、どう足掻いても触れたいとは思わない位の気持ち悪さが先走るのに、何故でんでん虫はまだ見れるんだろうか?


殻を持ち上げればヌメヌメボディに触らなくて済むからか?


いや、子供ならまだしも、大人になった今、その殻すら触りたいと思わない。


俺は、その葉にひっついて動かないでんでん虫をただ黙って見つめ、考えを巡らせる。


ま、まさか・・・・
まだ可愛いと思える要素とは!!



「この渦巻きかっ?!」



そう夜道で叫んだ俺を振り返る人も多々あったが、そんなのはどうでもいい。


この渦巻き状のぐるぐるが
【愛らしさ】
を醸し出しているのかもしれないっ!


俺は、俺なりに彼女の言う『愛らしさ』を知りかったんだ。

その日を境に、俺は渦巻きの愛らしさを探求していく日々を送って行く。


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