大人のEach Love
―――翌日。
俺は、昨夜帰宅する前に購入したブツを胸ポケットに挿し、出勤。
自宅を出てからというもの、女性だけに限らず振り返り見る人数多。
「ふふっ・・・早速、効果アリか?」
そうほくそ笑みながら会社のエントランスに足を踏み入れた。
俺の会社はフレックス。
俺が社内に踏み入れたのは9時の5分前。
その俺の目線の先に、取引先の社長の姿を捉えた。
相手も俺の存在に気付き、片手を挙げながら俺に近づいて来たんだ。
「社長。おはようございます。昨日の取引内容にご変更でも・・・?」
その言葉に答える素振りもなく、社長は俺の胸元に目をやったまま動きを止めていた。
「社長?どうかなさいましたか?」
「あぁ・・・おはよう。いや、内容変更などないよ。ただ、今日は昨日の御礼にと・・・。」
そう言いながらも、目線は俺の胸元。
ま、まさか・・・っ!!
コレの魅力に惹き付けられているのかっ?!
俺は胸元に入れたソレを抜き取り、社長に見せた。
「昨日、何の気なしに購入したんですよ。」
「佐田君。それを・・・わしに譲っては頂けないかね?」
社長はソレを凝視して俺に懇願した。
こ、これは俺の愛らしさを表現するアイテムっ!!
だが・・・
取引先の社長に対して拒否するなどっ・・・
「良かったら・・・どうぞ・・・」
心で愕然としながらも、俺はソレを社長に差し出した。
「おぉ!ありがとう佐田君!!この挨拶の帰りに孫に会いに行く所だったんだが、本当に助かったよ!これからも、宜しく頼むよ?」
そう言葉を残して、
俺の前から立ち去った取引先の社長。
その手には、昨日俺が購入したロリポップこと
【ペロペロキャンディ】が握られていた。
本日の作戦、失敗に終わる。