大人のEach Love
新しい一歩を踏み出す為に
この湿った空気が、鬱陶しい。
窓の外に見える薄曇りの空。
シトシトと細かい雨粒の注がれた世界。
この華やかな雰囲気が、鬱陶しい。
外の灰色とは違った真っ白な室内。
色とりどりの鮮やかな花やバルーンで
溢れかえる世界。
静かなこの空間に、数人の小さな話し声。
イラつきながら前方を見据えていると、
ステージ脇に設置されたスピーカーから
聞こえてきた音楽…。
子供の頃に耳にした、
お馴染みのテーマ曲だった。
後方の扉を、スタッフが押し開けたのだろう。
派手な音を響かせながら一息に開ききった。
-- ガチャリッ…キィッ!
スピーカーからはスタッフの声が。
私のすぐ隣には、純白の衣装に身を包んだ
私の親友がゆっくりと歩みを進めていた。
だけど、私は親友には目もくれず
前方の一点だけしか見てはいなかった…。
白いタキシードを身に纏っていた、
その人物だけを。