大人のEach Love
親友は、嬉しそうに微笑みながら
前方に立っていた人物に腕をそっと添えた後、
二人で足並みを合わせ、
残りの数メートルという距離を歩き出す。
二人がこの室内の前に辿り着くと
曲は少しずつ音を弱めて、そして鳴り止んだ。
それと同時に、形式的な流れ作業を
スタッフはスムーズに進行していった。
お決まりの、片言の日本語を話す外人。
お決まりの、誓いの言葉。
お決まりの…、誓いのキス。
とっとと終わらせてよっ…
新婦である親友と、
新郎である男が唇を重ねる直前。
その男は、私に一瞬だけ目を向けた。
この神聖な場所で、この神聖な儀式の最中だというのに、他の女を見るだなんて非常識だ。
あんたなんか…
別れて正解だ。
あんたなんか…
ただの、元彼に過ぎない。
はずなのに、
視線が交わった瞬間、私の胸は高鳴った。
…ムカつくくらいに。