大人のEach Love


挙式が無事に済み、一緒に来ていた友人達に
『私、披露宴は出席しないから。帰るね?』
と言葉を残してレストルームに向かった。




--- カツカツカツ…キィ…カシャンッ


個室に入り、鍵を掛けたその戸に背を預ける。


本当に、キツい…
何で私が、この式に呼ばれるわけ?

仕方ないか…
私を招いたのは、親友なんだから。



「…はぁ。…化粧直しして、帰ろ…。」


そう自分に言い聞かせた後、
戸の鍵に手を掛けたその時。

聞き慣れた友人達の話し声と共に、
レストルーム内にヒールの音が入ってきて。

見えるわけでもないのに、私はその戸から一歩
後退りをした。


「ねぇ?何で春美は披露宴に出席しないの?」


「は?あー…。あんたは知らなかったっけ。
新郎が春美の元彼だからだよ。」


「えーっ?!初耳だよ、それ!!
それじゃあ、複雑な気持ちにもなるわ。」


「おまけに、新婦は親友だしさ…。」


「…ねぇ?花子は知ってんのかな?
自分の旦那になる男と、自分の親友が
…付き合ってた、とか。」


「春美が言うわけないじゃんっ!」


「あは、だよねー。」



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