大人のEach Love
-- その週の土曜日。
花子達と街中の喫茶店で待ち合わせていた。
約束の時間は、午後1時。
元々、自分が遅刻するのは許せなかった私は
1時間前に入店し、軽い昼食を済ませた。
窓際に位置するテーブルを選んだのは、
店に入ってくる前の二人を眺めたかったから。
入店時に出迎えたウェイターに
『佐田という人が来たら、
こちらに案内して頂けますか?』
と伝えてある。
勿論、その後直ぐに花子にも『佐田だよ?』
と、メールを送った。
佐田というのは、彼の名字らしい。
昨夜、電話で知った事だった。
「花子、照れてたな…。あはっ…。」
昨日までの嬉しい気持ちが、嘘のようだ。
渇いた笑いしか出ない。
私が最後に付き合った彼と同じ名字
…だった、ってだけなのに。
「佐田なんて、どこにでもいるし。」
そう、たまたま…【同じ名字】なだけ…
万が一、元彼だったとしたって今更よ。
あれから、何年経ってると思ってるの?
私は、…平気。
私が、振ったんだから。
心の中で、そう呟いてはみたけれど、
私が見下ろしていた自身の両手は
微かに震えていた…。