大人のEach Love
どこをどう走っていたのか…
気が付くと、自分の住むアパートの前で。
運動不足の上に、やたらと走ったからなのか
身体中が重く感じる。
気持ちまでもが、比例しているかの様だ。
私の自宅があるのは、2階の突き当たり。
階段に足を一歩踏み出すと、踵に痛みが走る。
踵を確認してみると、
そこには大きな靴擦れが出来ていた。
皮が捲れ上がっている上に、血も滲んでいる。
両足とも…だ。
こんなに酷くなっていたのに、
帰り着くまで気付かないだなんて。
「本っ当に、情けないわね…。」
余りの自分のバカさ加減に、
溜め息すら出ない。
もう、自宅は目と鼻の先。
履いていたパンプスを脱ぎ、素足で階段を登る。
コンクリートの階段はひんやりとしていて
火照っていた足には気持ちが良かった。
まるで、その冷たさが足裏を伝って
私の気持ちまで落ち着かせている様で。
いつまでも、このままじゃいけない。
挙式だけは、出席しよう。
大切な親友の為に。
…そして、私の為にも。
自宅に入った私は、バッグからスマホを取り出し
花子にメールを打ち込み、送信した。
『きっと、彼は花子を幸せにしてくれるよ。』