大人のEach Love


「後は、二人で話すといい。
どうせお前は、今初めて口にしたんだろう?
律儀過ぎるのがお前の欠点だ。」


「返す言葉もございません。
では、失礼致します。」


書斎から出るまでは、

俺がお嬢の手を引いていたのに

書斎から出てからは、

俺が引かれる形になって

そのまま、お嬢の部屋に足を踏み入れた。


俺が後ろ手にドアを閉めると

お嬢は俺の胸に飛び込んできて

遠慮がちに、腕を巻き付ける。


そのぎこちない動作が堪らなく愛しくて


「…好きだ。」


その一言を、お嬢の耳元で囁くと


「これからは、名前で呼んでよね?」


と、照れを隠すようにツンとしてみせた。


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