ギャップのお楽しみ
そうして愚痴やら下らない話をしているうちに、真優ちんの彼の手塚さんが仕事を終えてお迎えに来たところでお開きになった。
会費を集めた環が会計をして、地下一階のお店から階段を上がって外に出ていく。
然り気無く階段を上がる前に一服してる彼の隣に並んだ。
「さっきはありがとう」
「なにが?」
「庇ってくれて…」
「事実を言っただけ…だけど?」
そう言って田辺くんは吸っていたタバコの火を消して、携帯灰皿に捨てる。
「そうかもしれないけど……」
「しおらしいの似合わないよ」
にやっとされて心臓が大きく一つ跳ねた。
「どういう意味?」
「そういうのはまだ先までとっとかないと
つまんないな」
「はあ?」
なに、この人。
頭がおかしいんじゃない?
「里美ー、このあとどうするー?」
階段の上の方から聞こえた実穂に答えようとした瞬間、ぎゅっと手が握られた。
「えっ……」
感触を楽しむように親指が手の甲を撫でる。
「なにこれヤバッ」
慌てて彼の手を避けたのに、すぐにまた掴まれて今度は手首の上まで撫でられる。
「ちょっと田辺くん、やめて」
軽く撫でられているだけなのに、身体が熱く燃え上がった。
「……直ぐに鎧外したくなった」
熱っぽく見つめられて胸がドキドキしだす。
「なに言ってるの……」
「俺と帰ろう」
「馬鹿言わないで、嫌よ」
離れようとすると、強い力で腕を引かれお店の脇にある外灯に照らされた大きな観葉植物の影へ連れて行かれる。
『あれ?里美は?』って声が小さくなっていく。