ギャップのお楽しみ

「とりあえずお試しでどう俺?」

「お試しって……」

さっき同様彼が私の手や手首を撫でると、
身体が反応して熱くなっていく。

「こんなスベスベの肌してるって知ったら、
 俺いつまでもつかわかんないけど…」

そう言いながら田辺くんが黒縁眼鏡を外して
上着の胸ポケットに入れた。

「えっ!!」

眼鏡を外した彼の瞳が色っぽくて、胸が高鳴る。

「なに驚いてんの?」

長い指が少しだけネクタイの結び目を緩めた。

その色気のある仕草に軽く目眩がした。

「だ、だって眼鏡……」

「ああこれ、キスするのに邪魔だろ?」

サラッと鬱陶しそうに前髪を掻き上げた彼の顔が実際は驚くほどイケメンで、驚いて息を飲む。

「ま、前髪……」

「わかってる。
 切った方がいいって言うんだろ?何なら
 明日切りに行くから一緒に行く?」

「ダメっ!!……じゃなくて…その……」

田辺くんがこんなイケメンだって知ったら、
来週から喫煙室は女子たちでいっぱいになっちゃう。

「里美」

「は、はいっ」

ギャップとこの状況に完全にパニクって声が裏返ってしまった。

「キスしていいか?」

「は、はい!って、えっ!キス?!」

あっ!て思った時にはすでに彼の顔が間近で
瞳を開けたまま唇が重なった。

彼の唇は思っていたのとは全然違って、
重なった唇の温度が気持ちよくて瞳を閉じて受け入れると、徐々に彼のペースに呑み込まれていく。

「んんっ…」

「…里美…少しだけ触らせて……」

キスの合間にそう囁いて、了承を得ずに彼の手がシャツの裾をスカートから引っ張り出して直(じか)に肌を撫でていく。

「あっ…ダメ……」

「なんでこんなにスベスベなんだよ、クソッ
 止められない」

夏の終わりに真優ちんの家に泊めてもらった時に乾燥肌だからこれからの季節が苦手なのよねー、って言ったら教えてくれたボディジェル。

真優ちんみたいな白いもちもち肌になれるとは思ってなかったけど、肌馴染みがよくて
気に入って全身に使い続けた成果がこれ?

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