可愛いあの人は高校生

あたしがしばらく泣いていると母さんが部屋に入ってきた。
あたしはなんだか気まずくて下を向いていた。

「奈々・・・。」
母さんはあたしの手を握った。
「辛い気持ちもわかるわ。お母さんも一度流産してしまったことがあるの。だから奈々の気持ち痛いくらいわかる。でも生まれてきたとしても、高校生との子供じゃ、食べていけないでしょ？だから・・・。」

あたしは母さんの言葉を遮った。
「なんでみんな高校生、高校生って言うの！？年の差があってなんでいけないの！？好きなんだからしょーがないじゃん！！」

あたしは泣きながら母さんの手を振り払った。

「違うわ。子供は高校卒業してからでも遅くないでしょう？そのことを赤ちゃんもわかっていたのよ。今生まれたらきっと生活が苦しくなってやっていけなくなるって。だからあなた達２人のために天国に行ってくれたのよ。だから悲しんでは駄目。」

そう言うと母さんは優しく微笑み、あたしを抱きしめてくれた。
あたしもその腕の中で泣いた。



あたしはふと手の暖かさを思い出した。
「あの・・・ありがとう。」
「なにが？」
母さんは不思議そうに聞いた。
「手・・・握っててくれて。」
そう言うと母さんはおもしろそうに笑い出した。

「ふふふ・・・手を握っていたのはお母さんじゃないわよ。もちろんお父さんでもないし。」
「え・・・？じゃあ誰が・・・？」


「加藤くんよ。」